漫画家・コラムニストの辛酸なめ子さんの特別エッセイ、今回訪れたのは富士山です。どんなを体験し、なにを感じたのか、今回もお楽しみください。
◎富士山に登ってみたい
日本一の山として、最高峰のパワスポオーラを振りまいている富士山。いつか富士山に登ってみたいという夢を抱いている人も多いことでしょう。
ただ、登山のハードルが高く、体力があって心肺機能や足腰が丈夫でないと難しい、という現実が。私も富士登山に憧れていたのですが、坂道が苦手で運動神経も悪いので踏み出せないでいました。そもそも霊峰に土足で登って良いものか、下から仰ぎ見たほうが良いのでは、という気もします。
富士山には惹かれるけれど登るのは躊躇している、そんな人におすすめなのが五合目散策です。車やバスで行けて疲労感もなく、雄大な富士山を体感できます。以前からバスツアーのサイトなどを見て気になっていたのですが、今回取材で伺う機会に恵まれました。
◎北口本宮冨士浅間神社
富士山の恩恵を得るには、まず神社に参拝するのが良いとのことで、北口本宮冨士浅間神社へ。御祭神は木花開耶姫命です。
富士山周辺には浅間神社がたくさんありますが、中でも北口本宮冨士浅間神社は、1900年以上の歴史がある由緒正しいお社です。境内に入ると、富士山からエネルギーが出ていますね」と、エネルギーを感じられる藤井さんはパワーをキャッチ。「鳥も鳴いて歓迎しているようです。本殿近付くほど、神気が来ています」。言われてみると、奥に進むにつれて空気が清らかになっていっているようです。
その日の天気は完全に晴れではなく富士山は雲をまとっていました。富士山の御祭神は女神様ですが、無邪気に雲と戯れ、遊んでいる様子は少女のようでした。ふわふわした雲は次々と形を変えて、富士山にじゃれるようにまとわりついています。
本殿に向かって左側には立派な「冨士太郎杉」が立っていました。根が不思議な形をしていて存在感があります。本殿で手を合わせると、厳かな中にウェルカムな暖かい空気を感じました。社殿の奥には鏡の代わりに松や鶴が描かれた金の障子がありました。自然への畏敬の念が湧いてきます。大天狗のお面も飾られていました。富士山周辺の他の神社にも天狗のお面があったので山の神社の特徴なのでしょうか。霊山はきっと今でも天狗が飛び回っているのでしょう。
境内には、西宮本殿や恵毘寿社などがあり、恵毘寿社は商売繁盛に霊験あらたかなのか大量ののぼりが寄進されていました。石材店、焼肉屋、塗装業など様々な業種ののぼりがはためき、地元の人に崇敬されているようです。大国主神(大黒様)と事代主神(恵比須様)という、最強のコンビが祀られていました。
藤井さんは西宮本殿にエネルギーを感じるとのことで、建物の反射に象のビジョンが見えたとのこと。社殿に象の装飾があったのと関係しているのでしょうか。

◎新屋山神社
続いて、日本三大金運神社の一つとされる、新屋山神社へ。先日購入した半導体関連の株が半値以上も下がってしまった身としてはぜひ神頼みしたいところです。「神は人の敬ひによって感を増し 人は神の徳によって運を添ふ」という由緒書きの言葉を胸にお参りいたしました。
その間、気のせいかもしれませんが、神様からずっと「金運を得て何をしたいのですか?」と問いかけられている感覚がありました。神様向けに善人風に「世の中に役に立つ仕事をして還元したいです」と心の中でお答えしましたが、やはり明確な目標があったほうが叶いやすいのかもしれません。神社の境内は明るい暖かいエネルギーが満ちていました。これはそのまま、お金が集まってくる人の特徴だとも考えられます。この神社で得た感覚を忘れないようにしたいです。
新屋山神社の奥宮は結構遠い所にありました。林の中の曲がりくねった道を延々と車で進んでいき、途中、熊出没注意の看板などもあり、自分が今、何山のどこにいるのかわかりません。
そして森の中に現れた小さな祠。知る人ぞ知る奥宮には、他にも何組か参拝者が訪れていました。山の匂いが濃くなり、周辺を歩いていると頭の半分が異次元に持っていかれそうな感覚です。神隠しが起こりそうな予感がする不思議な場所です。「この裏の林に濃密なエネルギーを感じます」と、藤井さん。その言葉に賛同するかのように鳥が「キュイーキュイー」と鳴いていました。裏の林のエネルギーが社殿に向かって流れているようです。何か地中に特殊な物質でも埋まっているのでしょうか? 藤井さんによると、人の欲の念が周辺にたまっている小さな祠より、裏の林のほうがエネルギーが良いそうでした。


◎富士山五合目へ
お参りもつつがなくすませたところで、スバルラインに乗って富士山五合目に向かいます。道の途中に「一合目 First step 1405m」「二合目 Second step 1596m」と標高を示す看板が出てきます。雲も近く感じられます。また、体感として一合目、二合目、三合目とステップアップするごとに次元も少し上がっていっているようでした。地上の人間界のエネルギーのふきだまりから離れ、天上界に近付いて波動も高まっているようです。雲も下のほうに見えるようになって、ついに五合目に到着。寒い季節なのに半袖の欧米人がいるのに驚きました。中国人の団体など、インバウンドに人気のようです。
富士山五合目は、旅行のパンフやサイトで見たことがあるからか、はじめてなのにはじめてという感じがしませんでした。もしかしたら魂で来ていたのでしょうか。登山シーズンによってはここを出発点に登る人もいれば、登山から帰ってきた人も、そしてただ散策している人もいて、人々が交錯する場所。休憩できるお店も並んでいます。
ここはまるで霊界の入り口のようだと感じました。亡くなったばかりの人が、少し休憩したり、行き先を振り分けられてさらに先に進んだりする場所のようです。不思議なデジャヴュ感と幽玄な空気に浸りました。また、間近に見える富士山の上層部も、雲で覆われたり、姿を現したりとめまぐるしく、山の気候は変わりやすいです。この世の事象は不変ではなく、常に変わりゆくもの、というメッセージを感じました。

◎冨士山小御嶽神社
五合目には冨士山小御嶽神社が鎮座しています。創建されたのが937年、という歴史にも驚きます。磐長姫命(木花咲耶姫の姉)をお祀りしていて、富士登山の守護神の放つパワフルなエネルギーを感じます。こちらも天狗のお面があり、より仙人度が増した眉毛長い天狗さんが印象的でした。
裏には溶岩がゴロゴロしていて、持って帰りたい衝動にかられますが、神社の人によると、エネルギーが強すぎて危険とのことでした。
浄化の作用なのか悪いことが起こってしまい、溶岩を返しにくる人や、郵便で返送してくる人も結構いるそうでした。ハワイのキラウエア火山の石にも、そんな話を聞いたことがあります。その場でアーシングしたり、お浄めされてお守りとして売られている小さい溶岩を買ったりするのが良さそうです。裏の溶岩スポットは、横たわったら岩盤浴ができそうでした。また、そこから御来光も拝めるようです。
八合目まで登って御来光を拝まなくても、五合目でも全然良いのでは? と思いました。「富士山で御来光を見た」と人に言っても嘘にはなりません。省エネで最も快適な富士登山を五合目で満喫できました。

◎五合目のミラクル
五合目では、そのあとさらにミラクル体験が炸裂。まず、太陽が白く見える不思議現象が発生しました。その日の雲の水蒸気の状態によるのかもしれませんが、くもごしに見える太陽が、昼間の満月のように真っ白だったのです。
そして、雲がない状態でも白い光を放つ太陽を目撃。中心の太陽部分もそこから放たれる光も白くて、松果体に差し込んでくると、心身が浄化されました。それと同時に、これは「チベット死者の書」とかに出てくる、人が亡くなったとき魂が飛び込む白い光のようだと感じました。一番強い白い光に飛び込むと、天上界に行けるという……。ここでも霊界のイニシエーションを体験できました。
また、五合目から少し下った駐車場で富士山を見ようと車から降りたときに、さらに不思議な事象を目撃。
頭上で細長い雲が円を描くようにクルクル回っているのです。つむじ風かと思いましたが、とくに強い風が吹いているわけでもなく……。
直感で、これは龍だと思いました。頭上で白く光る龍が回っていて、見ていたら雲がすーっと細かくなってふわっと消えていきました。富士山周辺ではよく龍のような雲が目撃されていますが、動きまで見せてもらって、ガチ龍だと感動しました。
さらにちょっと遠くの雲を見たら、雲からあきらかに龍の形の雲が何体も飛び出てきて、空に向かって飛んでいき、雲がとけるように消えていきました。空や雲を眺めるのが好きな私でも、雲から龍が飛び出すのを見たのははじめてです。
雲は龍の住処なのでしょうか。生態も気になるところです。「龍は架空の生き物」と一般には説明されていますが、そう聞くたびに、実際いるから! と言いたくなります。
何年か前に、夕方の上野の空で、光る粒子のガチ龍を目撃して以来の不思議な体験でした。帰り道に美しい雲海を見ましたが、やはり龍を見た体験には、どんな絶景も及ばないと感じました。
富士山五合目は、まさに異次元で、霊界を疑似体験できる場所。古来から日本人が富士山に憧れてきた意味がわかりました。
心身が浄化され、下界で見るよりも神気みなぎる太陽を浴びることで、自分の内側の太陽ともつながることができます。人生の困難に見舞われたとき、富士山での神々しい体験を思い出すことで、力がわいてきます。八合目までの苦しい登山をしなくても、人生そのものが登山だとも言えます。
この小旅行のあと、会う人に「オーラが明るくなった」とか「パワーを感じる」とか言われました。日本一のパワースポットに行くと、パワー人間に近付けるのかもしれません。
また都会で疲れや邪気がたまったら、魂を充電できる五合目を訪れたいです。ワーを感じる」とか言われました。日本一のパワースポットに行くと、パワー人間に近付けるのかもしれません。
また都会で疲れや邪気がたまったら、魂を充電できる五合目を訪れたいです。


